
現在40歳の筆者が、このエロ伝説を初めて耳にしたのは、今から約30年前、小学校高学年のときである。地元の青少年育成センターが主催するスキースクールに参加した際、その帰りのバスの中で、隣に座っていた引率の男子大学生がこっそり教えてくれたのだ。
「手を出して、ピストルの構えをしてごらん。ここ(親指の付け根)からここ(人差し指の先端)までの長さ──これが、お前の勃起したチンコの長さだ。図星だろ?」
あいにくそのとき定規を持っていなかったので、というか、持っていたところでバスの中で局部を露出するわけにはいかないので、私は返答を濁したまま家へ帰った。そして、自分の部屋に入るなり、さっそく定規で両者の長さを計測し、心の中でこう叫んだ。「本当だ! ピッタリだ!」。
ともに12センチ程度だったと記憶するが、数値がほぼ一致していたため驚いた。しかし、当時はまだ精通すら経験していないウブな小学生だったため、この驚きのニュースを誰にも発表することができなかった。自分が勃起するという事実を、周囲に知られたくなかったのだ。そこで私は秘密裏に、自室でチンコを勃起させては採寸する遊戯を繰り返すようになり、その遊びの過程で射精を覚えた。青少年育成センターは、こうしてひとりの性少年を確実に育成したのである。
その後、中学、高校、大学、就職と、さまざまな環境に身を置く中で、私は別の人間の口からも、上記のエロ伝説をたびたび耳にした。あるときは埼玉出身の同級生、あるときは九州出身の上司、あるときは札幌在住のキャバクラ嬢が、「ここ(親指の付け根)からここ(人差し指の先端)までの長さは、オチンチンの長さと一致するらしいよ」とまことしやかに囁いた。いつどこで誰が言い出したのかは分からないが、少なくとも30年以上前から、全国各地で当たり前のように、それなりの信憑性をもって言い伝えられてきた説のようである。
さて、ここからが本題だ。果たしてその伝説は正しいのかどうかを今改めて検証したいと思うのだ。小学生時代の私ひとりの計測データだけでは、真偽をジャッジすることはできない。そこで、私の周辺にいる、さまざまな年齢・体格の男性に協力を仰ぎ、指の長さと勃起時のチンコの長さを、ともにミリ単位まで計測してもらうことにした。中にはこの伝説を知らない男性もいるかもしれないので、調査の意図をなるべく悟られぬよう、小指の長さ、足のサイズなど、無関係なパーツの計測も同時にカモフラージュとしてお願いすることにした。
なお、勃起時のチンコの計測方法としては、「表側の付け根から先端まで」を測るように徹底指導した。これを事前にしっかり言っておかないと、付け根の意味を拡大解釈して、玉袋の裏側の会陰の部分から計測する馬鹿が出てくるかもしれないからだ。また、計測時のバイアグラ等の使用は不可とした。
調査報告が上がってくるのを待つ間に、私も被験者Aとなり、自分自身のサイズを久しぶりに測ってみたら、以下のような結果が出た。
・親指の付け根から人差し指の先端までの長さ(以下/指)……13.2センチ。
・勃起時のチンコの長さ(以下/チ)………………………………13.1センチ。
その差、わずかに1ミリである。少なくとも私に関して言えば、今も昔も両者のサイズは「ピッタリ一致する」と言っていい。参考までに私の現在の体格を紹介すると、身長181センチ、体重75キロ。「体格の割にアソコは小さい」と言われたことがあるが、それでも小学生時代に比べてサイズが微増していたことは嬉しい。しかし、定規を当てただけで勃起したあの頃とは違って、エロDVDを見ながら一生懸命擦った末の勃起だという事実は悲しい。
そんな複雑な感慨に耽っているうちに、続々と調査報告が届く。まずは、28歳、身長174センチ、体重62キロという中肉中背男性Bさんからの報告メール。
・指……13.5センチ。
・チ……13.2センチ。
その差、3ミリ。「ほぼ一致する」と言って差し支えはなさそうだ。なおBさんは、「オカズが身近になかったのであまりカチカチに勃起しなかった。本来ならば、もうちょいチンコは長いはず」と付記してきた。
続いては、35歳、身長162センチ、体重60キロという小柄で筋肉質な男性Cさんの調査結果。
・指……12.6センチ。
・チ……12.9センチ。
これまた、その差はわずかに3ミリ。「ほぼ一致する」と言っていい。Cさんは、今回の調査を受諾した際に、「定規で測るのは生まれて初めてだけど、僕のアソコはデカいですよ。勃起したら20センチぐらいはあるんじゃないかな」と豪語していたが、いざ計測してみたら、実寸はそれを遥かに下回る数字となった。このことについて、聞かれてもいないのにわざわざ「風邪気味だからいつもより小さかったかも……」と言い訳めいたコメントをメールで書いてきたのが可笑しい。たかが風邪ぐらいで7センチも縮むかっつーの!
調査をここで打ち切っていれば、「この伝説は正しい」と結論づけることもできたのだが、次に舞い込んできた報告で、早くも「待った!」をかけられてしまった。44歳、身長169センチ、体重81キロという小太り男性Dさんからのメールにはこう記されていたのだ。
・指……12.0センチ。
・チ……15.0センチ。
なんと、チンコのほうが3センチもデカいというではないか! これは何かの間違いではないだろうか? 思わずDさんに確認の電話をかけてしまった。
私「ちゃんと測ってくれました?」
D「測りましたよ」
私「バイアグラとか、使ってませんか?」
D「使ってませんよ」
私「裏側から測るんじゃないですよ。表側の付け根、チン毛がモジャモジャ生えているあたりから測るんですよ?」
D「ちゃんとそこから測りましたよ」
私「定規をお腹にめり込ませてないですか?」
D「そんなセコいこと、しませんよ!」
私「15センチジャスト、っていうのが怪しいなぁ。いかにも目分量って感じの数字じゃないですか」
D「疑うなら、こんなこと最初から頼まないでくださいよ!」
Dさんの口調に怒気がこもってきたので、謝ってから電話を切った。いやはや、この調査を開始してみて改めて気付かされたが、私を含む世の男性陣の多くは、チンコのサイズというものに対し、大人になってもセンシティブな感情を抱いているようだ。言い訳めいたことを付記してきたり、ちょっと疑われただけで怒ったり。相手が同性であれ、「小さい」と思われるのは屈辱であるようだ。
そう考えるとこの調査は、どれだけ多くのデータを集めたところで、正確なことは永遠に分からないような気がしてきた。なにしろサイズは「自己申告」であるため、見栄を張って過大申告する者が混じっていてもおかしくないからだ(私自身は正確な数値を発表したと神に誓うが)。
というわけで、今回集めた21人分のチンコサイズの計測データ(別表参照)の大半は、“追い風参考記録”としてとらえたほうがいいのかもしれないが、一応、指のサイズと比較してみよう。
半数以上の人が5ミリ以内の僅差に収まっているが、センチ単位のズレもチラホラ。最大だと4.1センチもの差があった(Nさん)。そういえば私が以前、ストリップの生板ショーで見かけた男性は、背が低くて手も小さかったのに、30センチをゆうに越える巨根をまぎれもなく保持していたので、10センチ以上開きがあるような者も世の中には稀に実在するのだろう。
しかし、サンプル数の少ない参考記録とはいえ、平均値を比べてみると、わずか8ミリしか差がないことから、今回のエロ伝説は「おおむね正しい」と結論づけたい。これに賛同できない読者は、よっぽど規格外のイチモツをお持ちであるということだ。喜ぼう! あるいは、悲しもう!
(取材・文)ヘドロ
被験者 | 指(A) | チンコ(B) | 備考 |
Aさん | 13.2 | 13.1 | 身長181、体重75、40歳 |
Bさん | 13.5 | 13.2 | 身長174、体重62、28歳 |
Cさん | 12.6 | 12.9 | 身長162、体重60、35歳 |
Dさん | 12.0 | 15.0 | 身長169、体重81、44歳 |
Eさん | 14.6 | 15.1 | 身長178、体重71、34歳 |
Fさん | 13.1 | 14.5 | 身長176、体重70、33歳 |
Gさん | 12.7 | 13.2 | 身長172、体重79、21歳 |
Hさん | 14.1 | 15.3 | 身長181、体重82、30歳 |
Iさん | 13.2 | 13.0 | 身長169、体重59、25歳 |
Jさん | 11.9 | 13.7 | 身長167、体重58、39歳 |
Kさん | 12.4 | 12.0 | 身長171、体重66、30歳 |
Lさん | 14.0 | 14.8 | 身長184、体重90、46歳 |
Mさん | 13.9 | 15.4 | 身長172、体重70、29歳 |
Nさん | 12.8 | 16.9 | 身長173、体重61、22歳 |
Oさん | 13.2 | 13.1 | 身長160、体重54、19歳 |
Pさん | 12.8 | 13.3 | 身長169、体重64、59歳 |
Qさん | 13.9 | 14.0 | 身長173、体重77、48歳 |
Rさん | 13.3 | 13.6 | 身長170、体重90、49歳 |
Sさん | 11.1 | 11.9 | 身長163、体重52、15歳 |
Tさん | 13.9 | 13.6 | 身長177、体重72、20歳 |
Uさん | 13.5 | 15.0 | 身長176、体重65、18歳 |
平均値 | 13.1 | 13.1 |

